交通事故の訴訟提起時に弁護士に相談すること

交通事故について弁護士に相談するタイミングのうち、最後の段階、訴訟提起時に弁護士に相談すべきことについての記事です。

交通事故について弁護士に相談するタイミングに関する、前回までの記事の続きです。

人身事故の段階、

①交通事故直後
②治療中
③治療終了時
④後遺障害認定時(後遺障害が残った場合)
⑤示談提案時
⑥訴訟時(示談が成立しなかった場合)

のうち、今回は最終段階、⑥訴訟を提起する際に弁護士に相談すべきことについて記載します。

この段階では、
・相手との交渉が決裂した
・相手から訴えられた
・交通事故紛争処理センターで話がまとまらなかった
・民事調停が不調に終わった
・相手は任意保険に入っていない

等の理由から、訴訟を検討されているのだと思います。

この段階では、
・本当に裁判をした方が良いのか
・被害者請求を先行した方が良いのか
・人身傷害保険をどのように使うべきか
・裁判をした場合の見通しはどのようなものか
・各損害費目は訴訟基準だとどれくらいになるか

等について弁護士に相談することになるでしょう。

国民には裁判を受ける権利があるので、もちろん弁護士に依頼しなくても裁判をすることはできますが、
・訴状や準備書面はどのように書くべきか
・一番有利な法的構成はどのような構成か
・どのような証拠を集めておくべきか
・どのようなタイミングでどのような証拠を出すべきか

等については、数多くの交通事故訴訟を手掛ける弁護士に任せた方が良い場合が多いです。

裁判は平日の日中に実施されるので、仕事や家事が忙しくて平日の日中に裁判所へ行くことが負担になる場合も、弁護士に依頼するメリットがあります。弁護士に依頼すれば、裁判所へ自ら行かなければならない場面は相当限られます。

この段階では、弁護士費用補償特約に加入していない場合であっても、弁護士に頼むメリットが大きいでしょう。仮に弁護士に依頼せずにご本人で裁判をされる際も、交通事故に強い弁護士から、アドバイスを受けられた上で裁判に進むことをお勧めします。

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保険会社からの示談提案時に弁護士に何を相談すべきか

こんばんは。名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

交通事故について弁護士に相談するタイミングに関する、前回までの記事の続きとなります。

人身事故の段階、

①交通事故直後
②治療中
③治療終了時
④後遺障害認定時(後遺障害が残った場合)
⑤示談提案時
⑥訴訟時(示談が成立しなかった場合)

の中から、今回は保険会社からの示談提案時に弁護士に相談すべきことについて書きます。

この段階は、
・治癒して治療が終了した後
・症状は残ったけれども、後遺障害については申請しなかった場合
・後遺障害が認定された後
等の段階です。
保険会社や保険会社の弁護士より、具体的な示談提示があった場合を想定しています。
「損害賠償のご案内」
「自動車対人賠償額のお支払いについて」
「免責証書」
「承諾書」
「示談書」
等様々な題名・形式のものがありますが、「この交通事故については○○円払って終わりにする」というものです。

この段階では、
・後遺障害の等級は妥当か(詳しくは前回
・提示されている金額は妥当か
・提案されている損害項目に漏れはないか
・訴訟基準だと賠償額はどれくらいになるか
・弁護士に依頼した場合、どれくらい増額の余地があるか
・仮に裁判となった場合、どのような見通しとなるか
・人身傷害保険等、被害者側の保険を使うべきか、使うとすればどのタイミングで使うべきか

等について弁護士に相談すべきでしょう。

提示されている具体的な費目についても、
・慰謝料は妥当か
・慰謝料について、赤い本等の基準との差はどの程度か
・逸失利益の計算方法は妥当か
・労働能力喪失期間は妥当か
・休業損害や逸失利益算定の基礎となっている収入は妥当か
・将来介護費等の計算方法は妥当か
・記載されている過失相殺率は妥当か

等について相談すべきでしょう。

この段階ともなれば、賠償額の算定がかなりの精度で可能となるので、交通事故専門の弁護士に相談することにより、かなり細かい点まで知ることができると思います。
様々な事情を正確に弁護士に伝えることにより、この世に2つとしてない、1つの交通事故についての、オーダーメイドのアドバイスを受けられるはずです。

弁護士に依頼すべきかどうかについても、この段階においては、明確な答えを求めることができると思います。

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交通事故の後遺障害認定時に弁護士に相談すべきこと

名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

交通事故について弁護士に相談するタイミングに関する、前回までの記事の続きとなります。

人身事故の段階、

①交通事故直後
②治療中
③治療終了時
④後遺障害認定時(後遺障害が残った場合)
⑤示談提案時
⑥訴訟時(示談が成立しなかった場合)

のうち、後遺障害認定時に弁護士に相談すべきことについて記載します。

この段階まで弁護士を入れていなかった場合、後遺障害の認定手続きについては、保険会社のいわゆる事前認定を利用して、後遺障害(後遺症)の認定を受けた方が多いと思います。
後遺障害の事前認定は、簡単にいえば、交通事故による後遺障害についての認定を、保険会社に任せる手続きとなります。
任意保険会社が最終的な示談提示に備えて、診断書等の資料を整え、自賠責保険に対して、交通事故被害者の後遺障害の認定を申請してくれます。

交通事故の被害者の方が保険会社から、
・後遺障害として14級が認定されました
・後遺障害として3級が認定されました
といった連絡を受けた場合は、自賠責保険における後遺障害が認定されたということです。
同時に示談提案を受ける場合も多いですが、示談提案を受けた際に弁護士に相談すべきことについては、次回書きたいと思います。
今回は後遺障害認定時に絞って書きます。
また、ご自身でされた被害者請求(16条請求)により後遺障害が認定された場合に弁護士に相談すべき点も、今回の記事が該当します。

この段階においては、
・認定された後遺障害の等級は妥当か
・異議申立てをすべきか
・異議申立てをした場合に等級が変わる可能性はどれくらいあるか
・異議申立てをするには、どういった検査を受ける必要があるか
・認定された後遺障害等級を前提にした場合、慰謝料の相場はいくらか(詳しくはこちら
・逸失利益はどのように計算するか
・逸失利益計算のために揃える資料は何か
・交通事故による総損害額はどれくらいとなるか
・相手方と示談する場合の目安はどれくらいか

といった点を、弁護士に相談すべきでしょう。
この段階では、弁護士費用補償特約(弁護士特約・弁護士保険)がなかった場合でも、弁護士に依頼するメリットが大きく、デメリットがあまりない場合も多いので、積極的に弁護士に相談すべきでしょう。弁護士費用が自己負担になったとしてもそれを賄って余りあることが多いです。
この段階まで1度も弁護士に相談されたことのない交通事故被害者の方は、交通事故に強い弁護士、交通事故専門の弁護士に相談されることを強くお勧めします。多くの交通事故を専門的に扱う法律事務所が無料相談を実施しているはずです。

また、後遺障害の認定が非該当であった場合も、その認定が妥当か等について弁護士に相談すると良いと思います。
仮に後遺障害が非該当であり、異議申立てが難しい場合であっても、それを前提とした妥当な示談金について、弁護士に相談できます。

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交通事故の治療終了時に弁護士に何を相談すべきか

名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

前回前々回の続きとなります。

人身事故の段階、

①交通事故直後
②治療中
③治療終了時
④後遺障害認定時(後遺障害が残った場合)
⑤示談提案時
⑥訴訟時(示談が成立しなかった場合)

の中から、③治療終了時に弁護士に相談すべきことについて記載します。

治療終了のきっかけとしては、

  • 完治して病院に行く必要がなくなった
  • 症状は残っているが、医師より、これ以上治療しても改善の見込みがないと言われた
  • 医師より、症状固定と言われた
  • 症状は残っているが、保険会社より、治療費を打ち切られた
  • 保険会社より、症状固定と言われた
  • 労災保険より、治療終了を言われた

等、様々なきっかけがあると思います。

これら、きっかけは様々かもしれませんが、交通事故の手続きとしては、次の2つの場合に分けて考えていくことになります。

  • 完治の場合
  • 症状が残っている場合

まず、完治の場合、その後の話としては、相手方との間で示談の話を進めていくことになります。この段階では、弁護士に、次のような点を相談すべきです。

・相手方から補償されるべき項目は、どういったものがあるか
・立て替えたお金はどうするか
・慰謝料はどれくらいになるか
・休業損害はどのように請求するか

この段階になれば、ある程度賠償の総額や、示談の見通し等目処がつくと思いますので、具体的な示談の金額や、弁護士に依頼した場合にどのような見通しになるかを相談すべきでしょう。弁護士費用の保険がない場合には、弁護士に依頼した場合の金銭的なメリット・デメリットも含めて、相談すべきです。

次は、症状が残っている場合です。
この場合、検討すべき点は多岐にわたるので、症状が残っている状態で治療を終了する場合は、必ず、交通事故に詳しい弁護士に相談すべきです。弁護士費用の保険がある場合はもちろん、弁護士費用の保険がない場合も、弁護士に依頼した方が良い場合が多いです。相談すべき点は次のような点になるでしょうか。

・治療を本当に終了して良いのか
・治療終了前にしておくべき検査等はないか
・後遺障害の手続きはした方が良いか
・後遺障害が認定される可能性はあるか
・後遺障害が認定されるとすれば、どのような等級の可能性があるか
・後遺障害診断書には、どのようなことを書いてもらうべきか
・治療を終了した後、何をすべきか
・後遺障害の手続中に集めておくべき資料は何か

等です。

この段階での動き如何によって最終的な解決が変わってくることがあるので、必ず、相談だけでもされることをお勧めします。

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交通事故の治療中に弁護士に相談すべきこと

前回の続きとなります。

前回記載したとおり、お怪我を伴う交通事故の大まかな段階は、次のとおりです。

①交通事故直後
②治療中
③治療終了時
④後遺障害認定時(後遺障害が残った場合)
⑤示談提案時
⑥訴訟時(示談が成立しなかった場合)

前回は、①交通事故直後について記載しましたが、今回は②治療中に弁護士に相談すべきことについて記載します。

治療中、交通事故の被害者は、入院や通院を続けていくことになります。

治療中は、保険会社から頻繁に連絡が来ることもあれば、ほとんど連絡がこないこともあります。
治療期間中は、1日でも早く身体を治すことに専念する期間となりますが、次のような点は、弁護士に相談しておくと良いと思います。

通院に必要な交通費はどうすべきか
入院中に必要になった費用はどうすべきか
休業が必要になった場合はどうすべきか
診察の際、医師にはどのようなことを伝えておくべきか(詳しくはこちら
保険会社から連絡があった際は、どういうことを伝えておくべきか
治療期間中に準備しておく証拠はあるか

特に怪我の程度が重い場合には、準備しておくべきことが多いので、遅くとも治療が終了する前に、弁護士に相談されることをお勧めします。
ご本人の意識がない場合等は、後見の手続きをしなければできないこと等もありますので、ご家族の方は早めに相談だけでもされることをお勧めします。

次回は治療終了時について記載します。


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交通事故について弁護士に相談するタイミングはいつがベストか?

名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

交通事故について、弁護士に相談するタイミングは、いつが良いのでしょうか。

弁護士への相談はいつでも良く、できれば早い方が良いというのが回答になります。

もっとも、段階に応じて、相談すべき点や、弁護士へ依頼すべきかという点が異なるので、段階に分けて記載したいと思います。
怪我を伴う交通事故の場合、段階としては、次の段階に分けることができます。

①交通事故直後
②治療中
③治療終了時
④後遺障害認定時(後遺障害が残った場合)
⑤示談提案時
⑥訴訟時(示談が成立しなかった場合)

どの段階においても、弁護士に相談するメリットはありますが、それぞれの時点において、どういった点を相談すべきか等について記載していきます。

  • 今回は、①交通事故直後について記載します。

交通事故直後は、交通事故について分からないことだらけの状態かと思います。
特に、初めて事故に遭われれる方にとっては、何を聞いて良いのかも、分からない状態だと思います。

交通事故直後の場合、まずは全体的な手続きの流れについて、弁護士へ聞いておいた方が良いと思います。
全体的な流れについて説明を受けたら、そのとき直面している、次のような点について確認すべきでしょう。
・人身届は出した方が良いのか(詳しくはこちら
・警察対応はどうすべきか(詳しくはこちら
・病院対応はどうすべきか(詳しくはこちら
・物損はどう進めていくべきか
・どのような証拠を残しておいた方が良いのか(詳しくはこちら
・健康保険を使った方が良いのか
・労災にした方が良いのか
・過失割合はどれくらいになりそうか
・病院へ行った方が良いのか
・車両保険や人身傷害保険等、自分の保険は使った方が良いのか
・会社を休むことになった場合の補償はどうなるのか

一人一人、正解が異なる事柄もあるので、可能であれば、交通事故直後に弁護士に相談しましょう。

特に、次のような方は交通事故直後にアドバイスを得ていた方が良いことが多いので、交通事故直後に弁護士に相談することを強くお勧めします。

・バイク、歩行者、自転車等の事故で、身体への衝撃が大きかった方
・遷延性意識障害、高次脳機能障害、脊髄損傷等、怪我が大きい方
・相手方との間で、交通事故の態様について、大きな争いになっている方

次回は、治療中に弁護士に相談すべき点等について記載したいと思います。


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後遺障害慰謝料の基準−赤い本の基準−

名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

前回、むち打ち症等の入通院慰謝料(傷害慰謝料)についての赤い本の基準を紹介しました。

今回は、後遺障害についての慰謝料を紹介します。

後遺障害は、ある程度治療をしたにもかかわらず、残ってしまった症状のことです。自賠責保険の基準により、1級から14級までの後遺障害等級が定められています。この等級は、労災保険の基準を基本的に準用しています。脊髄損傷等で常に介護が必要な場合は1級、1上肢の機能が全廃した場合には5級、1上肢のうちの1関節の可動域が半分以下に制限されている場合には10級、局部に神経症状が残った場合には14級等、症状の重さに応じて、様々な等級が定められています。

このような後遺障害が残ったことに対する精神的苦痛を慰謝するものとして、後遺障害慰謝料という損害項目があります。

では、赤い本では、各等級に応じて、どのような慰謝料の基準が示されているのでしょうか。赤い本では、次のような慰謝料の基準が示されています。

1級  2800万円

2級  2370万円

3級  1990万円

4級  1670万円

5級  1400万円

6級  1180万円

7級  1000万円

8級   830万円

9級   690万円

10級  550万円

11級  420万円

12級  290万円

13級  180万円

14級  110万円

もちろん、実際に裁判となった場合には、これらの基準からの増減がありますが、これらの基準は、かなり裁判所も参考にしています。

名古屋で交通事故を扱う弁護士が保険会社と交渉する際も、これらの基準を前提に話すことが多いです。


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交通事故の慰謝料基準-むち打ち症等の場合の赤い本の基準-

名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

交通事故の慰謝料の基準は、どういうものでしょうか。

今回は、むち打ち症等の場合の訴訟基準について書きます。

いわゆる訴訟基準、裁判基準、弁護士基準と呼ばれているものは、交通事故で裁判となった場合に、どれくらいの慰謝料となるかを想定した基準を指します。訴訟では、赤い本等に掲載されている基準がベースとなります。

赤い本では、むち打ち症等で他覚所見がない場合等は、慰謝料の別表Ⅱを使うとされています。交通事故で一番多いとされるむち打ち症、頸椎捻挫、外傷性頸部症候群、腰椎捻挫等で通院されている場合は、この基準が参考になります。骨折等のない打撲等も、基本的にこの基準が適用されます。骨折等がある場合は、別の基準、別表Ⅰを使うことになります。

別表Ⅱでは、通院期間に応じて、次のような基準が定められています。

通院1ヶ月   19万円

通院2ヶ月   36万円

通院3ヶ月   53万円

通院4ヶ月   67万円

通院5ヶ月   79万円

通院6ヶ月   89万円

通院7ヶ月   97万円

通院8ヶ月  103万円

通院9ヶ月  109万円

通院10ヶ月 113万円

通院11ヶ月 117万円

通院12ヶ月 119万円

通院13ヶ月以降は1ヶ月1万円ずつ増加

赤い本基準で通院半年の慰謝料が89万円等と言われるのは、この基準が元になっています。

もちろん、この基準は、交通事故被害者側で、その通院の必要性、相当性を証明できた場合が前提になっているため、不必要な治療があったり、不必要な期間があったり、交通事故の態様や症状からして内容が過剰であったりすると、この基準を適用することは難しくなります。

入院があれば、その分プラスされたり、通院頻度が少なければ、マイナスされることもあります。この基準は絶対的なものではなく、裁判になった場合、全然違う金額になることもあることについては、注意が必要です。

具体的に慰謝料がいくらになるかというのは、事案を具体的に検討しなければ分かりませんが、赤い本の基準は、原則的なものなので、とても参考になります。

保険会社から提示された慰謝料の額が、上記基準と大きく異なる場合は、弁護士に相談することをお勧めします。


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交通事故の慰謝料はなぜ弁護士に依頼すると増額する可能性があるのか?

今日は、交通事故の慰謝料と弁護士の関係についてのお話です。

交通事故の慰謝料は、なぜ弁護士に依頼すると増額する可能性があるのでしょうか。

弁護士は交通事故の知識が豊富だからでしょうか。
弁護士は口が上手く、交渉力があるのでしょうか。

もちろん、それらの側面もあるでしょうが、知識についてはインターネットを検索したり、本を購入すれば身につけることができますし、弁護士よりも交渉上手な方は多いと思います。そういう要素は、決定打にはなりません。

では、何が決定打になるのでしょうか。

それは、裁判を見据えた交渉をするという点です。

交通事故を扱っていると、数多くの交通事故裁判を経験することになります。数多くの交通事故裁判を経験していると、その交通事故の証拠状況から、どの程度の慰謝料を裁判所が認定するかというのをある程度予測することができます。公開されている過去の多数の裁判例からも、裁判所の考え方、双方の証拠状況、主張内容を検討し、今扱っている事案と対比しながら、今扱っている案件について、裁判所がどのような判断をするのかを予測していきます。
そうした予測を背景に交渉できるというのが、交通事故を扱う弁護士の強みです。
弁護士は、交渉のスタート段階から、裁判での結論を想定した請求をしていきます。

保険会社も、数多くの交通事故裁判を経験しているので、裁判となった場合に、どの程度の慰謝料になり得るのかというのを想定します。
被害者側が弁護士による請求の場合、裁判に至る可能性がそれなりにあるので、保険会社としても、わざわざ裁判をするよりも、裁判での結論に近い慰謝料での示談に応じるインセンティブがあります。

赤い本等に掲載されている慰謝料は、裁判になった場合の目安にはなりますが、実際には治療の必要性や治療内容、症状の重さ、事故の大きさ等、様々な事情により、裁判所の認定する慰謝料の額に幅があります。

同じ交通事故は2つとしてないので、その交通事故の慰謝料はいくらが適切かというのは、その交通事故のあらゆる事情を総合的に検討しなければ導き出せません。

それを導き、適切な交渉ができる可能性があるというのが、交通事故を扱う弁護士に依頼するメリットの1つだと思います。


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もう1つの緑の本、別冊判例タイムズとは?別冊判例タイムズ第38号民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準

今日はもう1つの緑の本についてのお話です。

前回、大阪地裁の緑の本について紹介しましたが、今回は東京地裁の緑の本です。

東京地裁の緑の本は、別冊判例タイムズ第38号民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準という本です。東京地裁民事交通訴訟研究会が編者で、判例タイムズ社が発行しています。この本も緑色なので、緑の本とか、緑本と呼ばれることもあります。

編者である東京地裁民事交通訴訟研究会は、東京地裁第27民事部の裁判官で構成されます。東京地裁第27民事部は前回紹介した大阪地裁第15民事部と同様、交通専門部であり、交通事故訴訟に特化したところです。日本の交通事故訴訟の中心といって良いでしょう。

判例タイムズは、昭和23年に創刊された、とても歴史のある判例雑誌で、月2回、発行されます。新しい判例の紹介や、論文の掲載、法律上の問題についての特集記事が掲載されたりするので、多くの弁護士が定期購読している雑誌です。これの別冊として発行されているのが、別冊判タ38号です。交通事故実務の世界で、単に別冊判タと言ったり、判例タイムズ、判タと言ったりした場合は、この本を指すことが多いです。

この本は、大阪地裁の緑の本と同様に、交通専門部の裁判官が編著に深く関わっているという価値があることに加え、過失相殺について分かりやすくまとめられているため、交通事故実務における過失相殺の検討は、基本的にこの本を中心に動いています

したがって、交通事故を扱う弁護士も保険会社も裁判所も、過失相殺を検討する際は、まずはこの本をベースに検討することになります。

交通事故が、四輪車同士の事故なのか、四輪車と二輪車による事故なのか、被害者が歩行者なのか自転車なのか等、当事者による類型分けがなされ、そこから、交差点の事故なのか、信号機のある場所の事故なのか、大きな道路の事故なのか等、細かく類型が分けられています。この本では、類型ごとに図も示され、示談交渉では、別冊判タ【104】図等、事故類型がこの本の図を基に示されたりすることもあります。

保険会社より、この事故の基本割合は10:90だとかいう提案があった場合、この本に記載されている、基本割合を指すことが多いはずです。裁判となった場合にこの割合がベースになる以上、保険会社も、当初からこの割合を意識した提案をしてくる場合が多いです。

基本割合には、その類型の事故で通常考慮されるような過失が含まれていますが、その他の過失を基礎付ける要素については、修正要素として記載されています。

被害者が高齢者や幼児である場合、被害者に有利に修正されることがあったり、加害者に飲酒運転の事実があったり、著しいスピード違反があったりした場合に、加害者に不利に修正されたりします。

世の中には、全く同じ交通事故は存在しないので、結局は個別の事故ごとに過失割合を検討しなければなりませんが、別冊判タは、その検討のスタートラインとなるイメージです。

赤い本青い本とは異なり、割と大きな書店であれば、通常の書店でも、置いてあることがあります。

 

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