緑のしおり改訂

緑のしおり、緑の本、緑本等と呼ばれている、交通事故損害賠償額算定のしおりが、令和2年3月付で、二十訂版として改訂されています。

大阪弁護士会の交通事故委員会が発行しているものです。

民法改正や自賠責の基準改定に伴って、改訂されています。

自賠責の基準の変更点が分かりやすく記載されています。

また、利息が5%から3%に変更となったことを踏まえ、各種ライプニッツ係数が変更されています。

特に、装具や器具等の購入費に関する買替係数表は、重度後遺障害の損害計算をする際、役に立ちそうです。

もう1つの緑の本、別冊判例タイムズとは?別冊判例タイムズ第38号民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準

今日はもう1つの緑の本についてのお話です。

前回、大阪地裁の緑の本について紹介しましたが、今回は東京地裁の緑の本です。

東京地裁の緑の本は、別冊判例タイムズ第38号民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準という本です。東京地裁民事交通訴訟研究会が編者で、判例タイムズ社が発行しています。この本も緑色なので、緑の本とか、緑本と呼ばれることもあります。

編者である東京地裁民事交通訴訟研究会は、東京地裁第27民事部の裁判官で構成されます。東京地裁第27民事部は前回紹介した大阪地裁第15民事部と同様、交通専門部であり、交通事故訴訟に特化したところです。日本の交通事故訴訟の中心といって良いでしょう。

判例タイムズは、昭和23年に創刊された、とても歴史のある判例雑誌で、月2回、発行されます。新しい判例の紹介や、論文の掲載、法律上の問題についての特集記事が掲載されたりするので、多くの弁護士が定期購読している雑誌です。これの別冊として発行されているのが、別冊判タ38号です。交通事故実務の世界で、単に別冊判タと言ったり、判例タイムズ、判タと言ったりした場合は、この本を指すことが多いです。

この本は、大阪地裁の緑の本と同様に、交通専門部の裁判官が編著に深く関わっているという価値があることに加え、過失相殺について分かりやすくまとめられているため、交通事故実務における過失相殺の検討は、基本的にこの本を中心に動いています

したがって、交通事故を扱う弁護士も保険会社も裁判所も、過失相殺を検討する際は、まずはこの本をベースに検討することになります。

交通事故が、四輪車同士の事故なのか、四輪車と二輪車による事故なのか、被害者が歩行者なのか自転車なのか等、当事者による類型分けがなされ、そこから、交差点の事故なのか、信号機のある場所の事故なのか、大きな道路の事故なのか等、細かく類型が分けられています。この本では、類型ごとに図も示され、示談交渉では、別冊判タ【104】図等、事故類型がこの本の図を基に示されたりすることもあります。

保険会社より、この事故の基本割合は10:90だとかいう提案があった場合、この本に記載されている、基本割合を指すことが多いはずです。裁判となった場合にこの割合がベースになる以上、保険会社も、当初からこの割合を意識した提案をしてくる場合が多いです。

基本割合には、その類型の事故で通常考慮されるような過失が含まれていますが、その他の過失を基礎付ける要素については、修正要素として記載されています。

被害者が高齢者や幼児である場合、被害者に有利に修正されることがあったり、加害者に飲酒運転の事実があったり、著しいスピード違反があったりした場合に、加害者に不利に修正されたりします。

世の中には、全く同じ交通事故は存在しないので、結局は個別の事故ごとに過失割合を検討しなければなりませんが、別冊判タは、その検討のスタートラインとなるイメージです。

赤い本青い本とは異なり、割と大きな書店であれば、通常の書店でも、置いてあることがあります。

 

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緑の本とは?大阪地裁における交通損害賠償の算定基準

名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

前々回は赤い本、前回は青い本について書きましたが、今回は緑の本です。

緑の本とは、大阪地裁民事交通訴訟研究会というところが編著者を務める、大阪地裁における交通損害賠償の算定基準という交通事故に関する本です。
本の色が緑色であることから、緑の本とか、緑本と呼ばれています。なお、カバーはそこまで緑色ではありませんが、カバーを取ると、本の本体は緑色です。大阪の弁護士には、緑色の小冊子、通称、緑のしおりが配られますが、緑の本はそれの解説本のような形で、主に大阪で交通事故を扱う弁護士に利用されています。
過失相殺に関する交通事故でよく使う著名な本、別冊判例タイムズ38も緑色であることから、こちらを緑の本と呼ぶ例もありますが、今回は大阪地裁の本について書きたいと思います。別冊判例タイムズ38については、後日機会があれば紹介したいと思います。

赤い本や青い本は、弁護士が編集しているのに対し、大阪の緑の本は、裁判官が編著者になっているのが特徴です。大阪地方裁判所では、第15民事部が交通事故の専門部となっています。専門部は、特定の種類の事件のみを扱う部で、通常の事件の配点を受けない部であり、大阪地裁第15民事部は、交通事故のエキスパートです。その第15民事部の裁判官が発信しているのが、緑の本であり、交通事故を専門的に扱う裁判官が発信する、とても貴重な本となります。

この本の第2編は、算定基準の解説ですが、裁判官自ら解説しているものであり、大変参考になります。赤い本や青い本より薄い本であり、端的な解説が続くため、通読しても苦になりません。交通事故損害賠償について裁判所の考え方が知りたければ、この本がシンプルで、とてもお勧めです。

慰謝料についても赤い本や青い本と違った特徴があります。
前回、赤い本と青い本の慰謝料について比較しましたが、今回は、赤い本と緑の本を比較したいと思います。

例えば、赤い本では半年通院の場合、むち打ち等は89万円、骨折等は116万円というのが基本的な基準です。これに対し、緑の本では、半年通院の場合、むち打ち等は80万円、骨折等は120万円というのが基本的な基準となります。
これをみると、大阪の方がむち打ち等に厳しく、東京の方が骨折等に厳しいように思えますね。他方、14級の後遺障害慰謝料は赤い本も緑の本も110万円でありながら、12級の慰謝料は赤290万円、緑280万円だったりします。慰謝料については所々違ってきます。大阪で訴訟基準とか裁判基準というときは、基本的にこの緑の本の基準を指します。
もっとも、これらはあくまで基本的な基準であり、当然、症状の重さや治療内容等の個別事情により、これらの基準から増減されることになります。結局、地域によって全く違うという話ではありません。昔は、東京と大阪でかなり考え方の異なる賠償項目がありましたが、年々、全国各地での違いは、なくなってきています。

ただ、大阪で交通事故の裁判をする際は必読ですし、相手方の保険会社のサービスセンターが大阪にある場合等は、緑の本を意識した示談交渉が必要になります。名古屋を中心とした東海地方で交通事故を扱っていても、同乗者の方が大阪在住であったりすると、大阪のサービスセンターと示談交渉したり、大阪で裁判したりすることもあります。名古屋で交通事故を扱う弁護士としても、必読の本です。

赤い本や青い本は、一般の方が購入するのは少し面倒ですが、緑の本については、楽天でも購入できるようです。

 

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