入院付添費2-賠償基準-

前回の続きです。

前回はどういう場合に入院付添費が認められるかについて記載しました。では、入院付添費の損害賠償額はどれくらいになるのでしょうか。

これは、一律で決まっている訳ではありません。常時介護が必要なのかどうか、症状の重さはどうなのか、付添時間はどの程度であったか、付き添ったご家族等は、どのような看護・介護をしていたのか等により個別・具体的に決まります。

一応、赤い本青い本に、基準が示されています。保険会社や裁判所も、これらの基準は参考にするので、ご紹介します。

赤い本の基準

赤い本では、近親者付添人は1日につき6500円との基準が示されています。

但し、症状の程度により、また、被害者が幼児、児童である場合には、1割〜3割の範囲で増額を考慮することがある、とされています。

青い本の基準

青い本では、近親者付添人の場合は、入院付添1日につき5500〜7000円という基準が紹介されています。

入院付添費

名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

交通事故の被害に遭われて入院された場合、ご家族等が入院に付き添うことがあります。

交通事故に遭わなければ入院する必要もなく、ご家族等が病院に行く必要もなかったはずです。こういったご家族等の付添について、何か補償はあるのでしょうか。

ご家族等が付き添う場合、交通事故の被害者から報酬をもらうことは少ないでしょう。そういう場合、出費はないですが、入院付添費として、損害賠償の対象となることがあります。

入院付添費については、医師の指示または受傷の程度、被害者の年齢等により必要があれば、相当な限度で認められるとされています。現在、医療機関においては完全看護体制のため、医師が指示する例は少ないですが、遷延性意識障害脊髄損傷等、症状が相当重篤な場合等には、医師の明確な指示がないような場合であっても、認められる例もあります。

交通事故被害者のご家族等としては、いつ入院付添をしたのか、後々になって分からなくてなってしまうことがないよう、手帳やスマートフォン等に付き添った日や支出したお金等をメモしておくことをお勧めします。レシートや領収書等も必ず保管しておきましょう。入院先の病院に行ったことを後から証明できるよう、心掛ける必要があります。

通院付添費についてはこちら

将来治療費2-将来手術費-

将来治療費の続きです。

将来の治療費として、将来の手術費が問題となることがあります。

症状固定となったものの、将来の歯科治療が必要不可欠な場合や人工骨頭置換術の再手術が確実に見込まれる場合、プレートを入れたままの事案において、プレート除去が将来確実に必要な場合等には、将来の手術費用が認められる例があります。

こういった将来手術費を請求するためには、それが必ず将来必要になることを医学的に証明していく必要があります。また、費用としていくらかかるのかを、具体的に示す必要があります。こういった証明をし、証拠を示すには、医師・医療機関の協力が不可欠です。加害者側の保険会社が納得できるようなもの、裁判に至っている場合には、裁判官が必要不可欠であると確信できる証拠を示さなければなりません。

将来治療費

交通事故の賠償の対象となる治療費は、原則として、治癒まで、あるいは症状固定までの治療費に限られます。

症状固定とは、それ以上治療してもあまり変化がなく、症状に改善がない状態を言います。

ほとんどの後遺障害の場合、症状固定後の治療費を加害者側に請求することは困難です。

しかし、重度の後遺障害が残存しているような事案において、生命維持のため、症状維持のために、治療を継続することが必要不可欠の場合には、将来治療費として、治療費が認められることがあります。

どのような場合に将来治療費が認められるかについては、一概には言えません。交通事故被害者の残存した個別具体的な症状・状態・環境等により様々ですが、例えば、遷延性意識障害により、生命維持のために継続的な医師による診察、治療が必要な場合や、脊髄損傷により、日常生活動作を維持するために継続的な在宅治療が必要な場合等は、将来治療費が認められる例があります。

将来治療費が問題となるような事案については、交通事故を専門的に扱う弁護士に相談すべきです。

整骨院・接骨院・柔道整復

街中では、交通事故治療を売りにしている整骨院・接骨院等をよく見かけます。名古屋市内だけでも、相当多くの整骨院・接骨院等が交通事故治療を売りにしています。

しかし、整骨院・接骨院等で施術を続けた場合、問題になることがあります。ではどのような場合に整骨院・接骨院等での施術が問題になるのでしょうか。

整骨院・接骨院等の先生は、医師ではありません。交通事故による治療については、医学的な必要性を証明していく必要があるのですが、整骨院・接骨院等の先生だけで、医学的必要性を証明することはできません。医学的必要性については、どうしても、医師に頼らざるを得ません。したがって、整骨院・接骨院で施術を受ける場合、医師の指示のもとで受ける必要があります。整骨院・接骨院等の施術について、否定的な整形外科医も多いので、主治医の整形外科医がそういう先生の場合、整骨院・接骨院等での施術を続けることは、大きなリスクを抱えることになります。受けた施術の必要性が否定された場合、整骨院・接骨院等にかかった費用については、自己負担となる可能性があります。

また、整骨院・接骨院等で、過剰な施術を受ける場合もよく問題となります。整形外科において診断名のついていない部位について施術を受けると、不必要な施術と判断される可能性があります。そして、診断名のついている部位であっても、必要以上に施術を続けた場合、過剰であるとして否定される可能性があります。

交通事故の被害者としては、仕事の都合等から、整骨院・接骨院に頼らざるを得ない場面もあると思います。そういう場合も、施術の必要性・相当性が問題となりうることを念頭に置き、主治医と密に相談しながら、適切な治療を続けていく必要があります。

個室料・特別室料

入院する際、個室を利用することがあります。

交通事故により怪我をして入院した際に個室を利用した場合、その個室料・特別室料については、加害者側が払ってくれるのでしょうか。

個室料・特別室料については、加害者側に支払い義務が認められる場合と、支払い義務が認められない場合があります。

では、どういう場合に認められるのでしょうか。

一般的には、通常の大部屋でも治療が可能であるような場合には、認められないことが多いです。他方、特別室に入らなければ治療が困難なほど、症状が重篤な場合には、認められる傾向にあります。治療の必要性以外にも、やむを得ない理由がある場合、認められることもあります。

個室料については原則として認められないが、必要不可欠な場合には認められる場合がある、ということになります。

例えば、症状との兼ね合いで、大部屋だと感染症に罹患する可能性が極めて高いような場合や、極めて多数の医療機器の使用が必要で、そのスペースが必要な場合等は認められる可能性があります。また、大部屋が満床で、転院も難しいような場合等には、個室の使用がやむを得ないとされる可能性があります。

交通事故の被害者としては、医師が医学的な必要性から個室の指示を指示したような場合以外については、個室料が自己負担となる可能性が高いことを認識した上で、個室を使用するか否かを検討した方が良いということになります。

過剰診療

治療費として問題となりうるものに、過剰診療というものがあります。

医学的に必要性が乏しいにもかかわらず、必要以上に過剰な治療が行われているような場合については、治療費を加害者側に負担させるのは相当でないとして、治療費が否定される場合があります。

医師の指示等がないにもかかわらず、多数の医療機関を受診しているような場合に、多数の医療機関を受診する必要はなかったとして、一部の医療機関における治療費が否定されるような例があります。

交通事故の被害者としては、後々、過剰診療と言われることがないように、他の医療機関を受診する際は主治医に相談したり、加害者側の保険会社に相談したりした方が良いでしょう。詳しい検査をしてもらいたいような場合も、主治医に紹介状を書いてもらう等して、医学的な必要性を確認しながら、治療を続けることをお勧めします。

不必要な入院や、長すぎる通院は特に問題となりやすいので、入院や通院の必要性については、しっかりとお医者様と相談しながら判断していきましょう。保険会社は、最初は払うと言っていた治療費を、後々否定してくることもあるので、保険会社が払うと言っていても安心はできません。後々争われても大丈夫な治療を続けることを、交通事故被害者は心掛けなければなりません。

治療費

名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

交通事故の被害に遭われた方が請求する損害賠償の項目について、書いていきたいと思います。

まずは、治療費です。交通事故に遭われてお怪我をされた場合、病院へ行き、治療を受けることになります。交通事故に遭われた後に受けられた治療であれば全てその費用を相手方が支払う訳ではなく、一定の制限があります。

交通事故の治療費について、加害者側が払うべき治療費は、「必要かつ相当」なものとされています。この、「必要かつ相当」という言葉は、他の損害項目についても出てくる言葉ですが、交通事故に遭われた方にとって、必要不可欠で、かつ、それが、相当なものであることが求められます。

交通事故と関係のない治療をしていた場合は、交通事故との関係では必要のないものとなりますし、ある程度必要であったとしても、それが過剰であるような場合には、相当なものではないということになります。この場合、その治療費を加害者側に負担させることはできず、原則として自己負担となります。

そして、治療費が必要かつ相当であることについては、被害者の側で証明していく必要があります。

どういった場合に問題となりうるかについては、次回以降、お伝えしていきたいと思います。