もう1つの緑の本、別冊判例タイムズとは?別冊判例タイムズ第38号民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準

今日はもう1つの緑の本についてのお話です。

前回、大阪地裁の緑の本について紹介しましたが、今回は東京地裁の緑の本です。

東京地裁の緑の本は、別冊判例タイムズ第38号民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準という本です。東京地裁民事交通訴訟研究会が編者で、判例タイムズ社が発行しています。この本も緑色なので、緑の本とか、緑本と呼ばれることもあります。

編者である東京地裁民事交通訴訟研究会は、東京地裁第27民事部の裁判官で構成されます。東京地裁第27民事部は前回紹介した大阪地裁第15民事部と同様、交通専門部であり、交通事故訴訟に特化したところです。日本の交通事故訴訟の中心といって良いでしょう。

判例タイムズは、昭和23年に創刊された、とても歴史のある判例雑誌で、月2回、発行されます。新しい判例の紹介や、論文の掲載、法律上の問題についての特集記事が掲載されたりするので、多くの弁護士が定期購読している雑誌です。これの別冊として発行されているのが、別冊判タ38号です。交通事故実務の世界で、単に別冊判タと言ったり、判例タイムズ、判タと言ったりした場合は、この本を指すことが多いです。

この本は、大阪地裁の緑の本と同様に、交通専門部の裁判官が編著に深く関わっているという価値があることに加え、過失相殺について分かりやすくまとめられているため、交通事故実務における過失相殺の検討は、基本的にこの本を中心に動いています

したがって、交通事故を扱う弁護士も保険会社も裁判所も、過失相殺を検討する際は、まずはこの本をベースに検討することになります。

交通事故が、四輪車同士の事故なのか、四輪車と二輪車による事故なのか、被害者が歩行者なのか自転車なのか等、当事者による類型分けがなされ、そこから、交差点の事故なのか、信号機のある場所の事故なのか、大きな道路の事故なのか等、細かく類型が分けられています。この本では、類型ごとに図も示され、示談交渉では、別冊判タ【104】図等、事故類型がこの本の図を基に示されたりすることもあります。

保険会社より、この事故の基本割合は10:90だとかいう提案があった場合、この本に記載されている、基本割合を指すことが多いはずです。裁判となった場合にこの割合がベースになる以上、保険会社も、当初からこの割合を意識した提案をしてくる場合が多いです。

基本割合には、その類型の事故で通常考慮されるような過失が含まれていますが、その他の過失を基礎付ける要素については、修正要素として記載されています。

被害者が高齢者や幼児である場合、被害者に有利に修正されることがあったり、加害者に飲酒運転の事実があったり、著しいスピード違反があったりした場合に、加害者に不利に修正されたりします。

世の中には、全く同じ交通事故は存在しないので、結局は個別の事故ごとに過失割合を検討しなければなりませんが、別冊判タは、その検討のスタートラインとなるイメージです。

赤い本青い本とは異なり、割と大きな書店であれば、通常の書店でも、置いてあることがあります。

 

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村


弁護士ランキングへ