通院付添費

交通事故の被害に遭い、症状が重篤な場合で1人で通院することが困難な場合、病院にご家族に付き添ってもらうことがあると思います。

また、お子様やご高齢のご家族が事故に遭った場合、通院に付き添うことがあると思います。

交通事故に遭わなければこういった付添は不要であり、事故によって余計な時間・手間がかかったことになります。そういった点について、何か補償はあるのでしょうか。

こういった通院の付き添いに関する損害については、通院付添費という項目で損害賠償の対象となる場合があります。

赤い本(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準)には、「症状または幼児等必要と認められる場合には被害者本人の損害として肯定される」とシンプルに記載されていますが、実際は、症状がどれくらい重篤か、付き添わなければならない事情としてどういったものがあるのか、を丁寧に証明していく必要があります。交通事故の被害者がかなり幼少の場合は、比較的スムーズに認められる傾向がありますが、ある程度1人で出かけられるような年齢になると、かなり争われることもあります。

では、損害賠償がなされる場合、基準はあるのでしょうか。これについて、赤い本では、1日につき3300円とされています。しかし、実際の裁判例では、それよりも低い金額で認定されている場合も、反対に、それよりも高い金額で認定されている場合もあります。結局は付添がどの程度必要だったのか、付添にはどれくらい時間や手間がかかったのか、付き添いをすることによってどのような不利益が付き添った人に生じたのか、等々から、相当な金額が認定されることになります。

交通事故の被害に遭って弁護士に賠償請求を依頼する場合、誰かが通院に付き添ったのであれば、必ず、弁護士にその旨を伝えましょう。また、弁護士を入れずに保険会社と交渉する場合も、必ず、保険会社の担当者に、付き添ったことを伝えましょう。そして、通院に付き添ったのであれば、その日が分かるよう、何か記録に残しましょう。この点は、入院付添費の場合と同様です。

入院付添費2-賠償基準-

前回の続きです。

前回はどういう場合に入院付添費が認められるかについて記載しました。では、入院付添費の損害賠償額はどれくらいになるのでしょうか。

これは、一律で決まっている訳ではありません。常時介護が必要なのかどうか、症状の重さはどうなのか、付添時間はどの程度であったか、付き添ったご家族等は、どのような看護・介護をしていたのか等により個別・具体的に決まります。

一応、赤い本青い本に、基準が示されています。保険会社や裁判所も、これらの基準は参考にするので、ご紹介します。

赤い本の基準

赤い本では、近親者付添人は1日につき6500円との基準が示されています。

但し、症状の程度により、また、被害者が幼児、児童である場合には、1割〜3割の範囲で増額を考慮することがある、とされています。

青い本の基準

青い本では、近親者付添人の場合は、入院付添1日につき5500〜7000円という基準が紹介されています。

入院付添費

名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

交通事故の被害に遭われて入院された場合、ご家族等が入院に付き添うことがあります。

交通事故に遭わなければ入院する必要もなく、ご家族等が病院に行く必要もなかったはずです。こういったご家族等の付添について、何か補償はあるのでしょうか。

ご家族等が付き添う場合、交通事故の被害者から報酬をもらうことは少ないでしょう。そういう場合、出費はないですが、入院付添費として、損害賠償の対象となることがあります。

入院付添費については、医師の指示または受傷の程度、被害者の年齢等により必要があれば、相当な限度で認められるとされています。現在、医療機関においては完全看護体制のため、医師が指示する例は少ないですが、遷延性意識障害脊髄損傷等、症状が相当重篤な場合等には、医師の明確な指示がないような場合であっても、認められる例もあります。

交通事故被害者のご家族等としては、いつ入院付添をしたのか、後々になって分からなくてなってしまうことがないよう、手帳やスマートフォン等に付き添った日や支出したお金等をメモしておくことをお勧めします。レシートや領収書等も必ず保管しておきましょう。入院先の病院に行ったことを後から証明できるよう、心掛ける必要があります。

通院付添費についてはこちら

将来治療費2-将来手術費-

将来治療費の続きです。

将来の治療費として、将来の手術費が問題となることがあります。

症状固定となったものの、将来の歯科治療が必要不可欠な場合や人工骨頭置換術の再手術が確実に見込まれる場合、プレートを入れたままの事案において、プレート除去が将来確実に必要な場合等には、将来の手術費用が認められる例があります。

こういった将来手術費を請求するためには、それが必ず将来必要になることを医学的に証明していく必要があります。また、費用としていくらかかるのかを、具体的に示す必要があります。こういった証明をし、証拠を示すには、医師・医療機関の協力が不可欠です。加害者側の保険会社が納得できるようなもの、裁判に至っている場合には、裁判官が必要不可欠であると確信できる証拠を示さなければなりません。

個室料・特別室料

入院する際、個室を利用することがあります。

交通事故により怪我をして入院した際に個室を利用した場合、その個室料・特別室料については、加害者側が払ってくれるのでしょうか。

個室料・特別室料については、加害者側に支払い義務が認められる場合と、支払い義務が認められない場合があります。

では、どういう場合に認められるのでしょうか。

一般的には、通常の大部屋でも治療が可能であるような場合には、認められないことが多いです。他方、特別室に入らなければ治療が困難なほど、症状が重篤な場合には、認められる傾向にあります。治療の必要性以外にも、やむを得ない理由がある場合、認められることもあります。

個室料については原則として認められないが、必要不可欠な場合には認められる場合がある、ということになります。

例えば、症状との兼ね合いで、大部屋だと感染症に罹患する可能性が極めて高いような場合や、極めて多数の医療機器の使用が必要で、そのスペースが必要な場合等は認められる可能性があります。また、大部屋が満床で、転院も難しいような場合等には、個室の使用がやむを得ないとされる可能性があります。

交通事故の被害者としては、医師が医学的な必要性から個室の指示を指示したような場合以外については、個室料が自己負担となる可能性が高いことを認識した上で、個室を使用するか否かを検討した方が良いということになります。

過剰診療

治療費として問題となりうるものに、過剰診療というものがあります。

医学的に必要性が乏しいにもかかわらず、必要以上に過剰な治療が行われているような場合については、治療費を加害者側に負担させるのは相当でないとして、治療費が否定される場合があります。

医師の指示等がないにもかかわらず、多数の医療機関を受診しているような場合に、多数の医療機関を受診する必要はなかったとして、一部の医療機関における治療費が否定されるような例があります。

交通事故の被害者としては、後々、過剰診療と言われることがないように、他の医療機関を受診する際は主治医に相談したり、加害者側の保険会社に相談したりした方が良いでしょう。詳しい検査をしてもらいたいような場合も、主治医に紹介状を書いてもらう等して、医学的な必要性を確認しながら、治療を続けることをお勧めします。

不必要な入院や、長すぎる通院は特に問題となりやすいので、入院や通院の必要性については、しっかりとお医者様と相談しながら判断していきましょう。保険会社は、最初は払うと言っていた治療費を、後々否定してくることもあるので、保険会社が払うと言っていても安心はできません。後々争われても大丈夫な治療を続けることを、交通事故被害者は心掛けなければなりません。

治療費

名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

交通事故の被害に遭われた方が請求する損害賠償の項目について、書いていきたいと思います。

まずは、治療費です。交通事故に遭われてお怪我をされた場合、病院へ行き、治療を受けることになります。交通事故に遭われた後に受けられた治療であれば全てその費用を相手方が支払う訳ではなく、一定の制限があります。

交通事故の治療費について、加害者側が払うべき治療費は、「必要かつ相当」なものとされています。この、「必要かつ相当」という言葉は、他の損害項目についても出てくる言葉ですが、交通事故に遭われた方にとって、必要不可欠で、かつ、それが、相当なものであることが求められます。

交通事故と関係のない治療をしていた場合は、交通事故との関係では必要のないものとなりますし、ある程度必要であったとしても、それが過剰であるような場合には、相当なものではないということになります。この場合、その治療費を加害者側に負担させることはできず、原則として自己負担となります。

そして、治療費が必要かつ相当であることについては、被害者の側で証明していく必要があります。

どういった場合に問題となりうるかについては、次回以降、お伝えしていきたいと思います。

交通事故の訴訟提起時に弁護士に相談すること

交通事故について弁護士に相談するタイミングのうち、最後の段階、訴訟提起時に弁護士に相談すべきことについての記事です。

交通事故について弁護士に相談するタイミングに関する、前回までの記事の続きです。

人身事故の段階、

①交通事故直後
②治療中
③治療終了時
④後遺障害認定時(後遺障害が残った場合)
⑤示談提案時
⑥訴訟時(示談が成立しなかった場合)

のうち、今回は最終段階、⑥訴訟を提起する際に弁護士に相談すべきことについて記載します。

この段階では、
・相手との交渉が決裂した
・相手から訴えられた
・交通事故紛争処理センターで話がまとまらなかった
・民事調停が不調に終わった
・相手は任意保険に入っていない

等の理由から、訴訟を検討されているのだと思います。

この段階では、
・本当に裁判をした方が良いのか
・被害者請求を先行した方が良いのか
・人身傷害保険をどのように使うべきか
・裁判をした場合の見通しはどのようなものか
・各損害費目は訴訟基準だとどれくらいになるか

等について弁護士に相談することになるでしょう。

国民には裁判を受ける権利があるので、もちろん弁護士に依頼しなくても裁判をすることはできますが、
・訴状や準備書面はどのように書くべきか
・一番有利な法的構成はどのような構成か
・どのような証拠を集めておくべきか
・どのようなタイミングでどのような証拠を出すべきか

等については、数多くの交通事故訴訟を手掛ける弁護士に任せた方が良い場合が多いです。

裁判は平日の日中に実施されるので、仕事や家事が忙しくて平日の日中に裁判所へ行くことが負担になる場合も、弁護士に依頼するメリットがあります。弁護士に依頼すれば、裁判所へ自ら行かなければならない場面は相当限られます。

この段階では、弁護士費用補償特約に加入していない場合であっても、弁護士に頼むメリットが大きいでしょう。仮に弁護士に依頼せずにご本人で裁判をされる際も、交通事故に強い弁護士から、アドバイスを受けられた上で裁判に進むことをお勧めします。

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保険会社からの示談提案時に弁護士に何を相談すべきか

こんばんは。名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

交通事故について弁護士に相談するタイミングに関する、前回までの記事の続きとなります。

人身事故の段階、

①交通事故直後
②治療中
③治療終了時
④後遺障害認定時(後遺障害が残った場合)
⑤示談提案時
⑥訴訟時(示談が成立しなかった場合)

の中から、今回は保険会社からの示談提案時に弁護士に相談すべきことについて書きます。

この段階は、
・治癒して治療が終了した後
・症状は残ったけれども、後遺障害については申請しなかった場合
・後遺障害が認定された後
等の段階です。
保険会社や保険会社の弁護士より、具体的な示談提示があった場合を想定しています。
「損害賠償のご案内」
「自動車対人賠償額のお支払いについて」
「免責証書」
「承諾書」
「示談書」
等様々な題名・形式のものがありますが、「この交通事故については○○円払って終わりにする」というものです。

この段階では、
・後遺障害の等級は妥当か(詳しくは前回
・提示されている金額は妥当か
・提案されている損害項目に漏れはないか
・訴訟基準だと賠償額はどれくらいになるか
・弁護士に依頼した場合、どれくらい増額の余地があるか
・仮に裁判となった場合、どのような見通しとなるか
・人身傷害保険等、被害者側の保険を使うべきか、使うとすればどのタイミングで使うべきか

等について弁護士に相談すべきでしょう。

提示されている具体的な費目についても、
・慰謝料は妥当か
・慰謝料について、赤い本等の基準との差はどの程度か
・逸失利益の計算方法は妥当か
・労働能力喪失期間は妥当か
・休業損害や逸失利益算定の基礎となっている収入は妥当か
・将来介護費等の計算方法は妥当か
・記載されている過失相殺率は妥当か

等について相談すべきでしょう。

この段階ともなれば、賠償額の算定がかなりの精度で可能となるので、交通事故専門の弁護士に相談することにより、かなり細かい点まで知ることができると思います。
様々な事情を正確に弁護士に伝えることにより、この世に2つとしてない、1つの交通事故についての、オーダーメイドのアドバイスを受けられるはずです。

弁護士に依頼すべきかどうかについても、この段階においては、明確な答えを求めることができると思います。

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交通事故の後遺障害認定時に弁護士に相談すべきこと

名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

交通事故について弁護士に相談するタイミングに関する、前回までの記事の続きとなります。

人身事故の段階、

①交通事故直後
②治療中
③治療終了時
④後遺障害認定時(後遺障害が残った場合)
⑤示談提案時
⑥訴訟時(示談が成立しなかった場合)

のうち、後遺障害認定時に弁護士に相談すべきことについて記載します。

この段階まで弁護士を入れていなかった場合、後遺障害の認定手続きについては、保険会社のいわゆる事前認定を利用して、後遺障害(後遺症)の認定を受けた方が多いと思います。
後遺障害の事前認定は、簡単にいえば、交通事故による後遺障害についての認定を、保険会社に任せる手続きとなります。
任意保険会社が最終的な示談提示に備えて、診断書等の資料を整え、自賠責保険に対して、交通事故被害者の後遺障害の認定を申請してくれます。

交通事故の被害者の方が保険会社から、
・後遺障害として14級が認定されました
・後遺障害として3級が認定されました
といった連絡を受けた場合は、自賠責保険における後遺障害が認定されたということです。
同時に示談提案を受ける場合も多いですが、示談提案を受けた際に弁護士に相談すべきことについては、次回書きたいと思います。
今回は後遺障害認定時に絞って書きます。
また、ご自身でされた被害者請求(16条請求)により後遺障害が認定された場合に弁護士に相談すべき点も、今回の記事が該当します。

この段階においては、
・認定された後遺障害の等級は妥当か
・異議申立てをすべきか
・異議申立てをした場合に等級が変わる可能性はどれくらいあるか
・異議申立てをするには、どういった検査を受ける必要があるか
・認定された後遺障害等級を前提にした場合、慰謝料の相場はいくらか(詳しくはこちら
・逸失利益はどのように計算するか
・逸失利益計算のために揃える資料は何か
・交通事故による総損害額はどれくらいとなるか
・相手方と示談する場合の目安はどれくらいか

といった点を、弁護士に相談すべきでしょう。
この段階では、弁護士費用補償特約(弁護士特約・弁護士保険)がなかった場合でも、弁護士に依頼するメリットが大きく、デメリットがあまりない場合も多いので、積極的に弁護士に相談すべきでしょう。弁護士費用が自己負担になったとしてもそれを賄って余りあることが多いです。
この段階まで1度も弁護士に相談されたことのない交通事故被害者の方は、交通事故に強い弁護士、交通事故専門の弁護士に相談されることを強くお勧めします。多くの交通事故を専門的に扱う法律事務所が無料相談を実施しているはずです。

また、後遺障害の認定が非該当であった場合も、その認定が妥当か等について弁護士に相談すると良いと思います。
仮に後遺障害が非該当であり、異議申立てが難しい場合であっても、それを前提とした妥当な示談金について、弁護士に相談できます。

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