緑の本とは?大阪地裁における交通損害賠償の算定基準

名古屋で交通事故を扱う弁護士です。

前々回は赤い本、前回は青い本について書きましたが、今回は緑の本です。

緑の本とは、大阪地裁民事交通訴訟研究会というところが編著者を務める、大阪地裁における交通損害賠償の算定基準という交通事故に関する本です。
本の色が緑色であることから、緑の本とか、緑本と呼ばれています。なお、カバーはそこまで緑色ではありませんが、カバーを取ると、本の本体は緑色です。大阪の弁護士には、緑色の小冊子、通称、緑のしおりが配られますが、緑の本はそれの解説本のような形で、主に大阪で交通事故を扱う弁護士に利用されています。
過失相殺に関する交通事故でよく使う著名な本、別冊判例タイムズ38も緑色であることから、こちらを緑の本と呼ぶ例もありますが、今回は大阪地裁の本について書きたいと思います。別冊判例タイムズ38については、後日機会があれば紹介したいと思います。

赤い本や青い本は、弁護士が編集しているのに対し、大阪の緑の本は、裁判官が編著者になっているのが特徴です。大阪地方裁判所では、第15民事部が交通事故の専門部となっています。専門部は、特定の種類の事件のみを扱う部で、通常の事件の配点を受けない部であり、大阪地裁第15民事部は、交通事故のエキスパートです。その第15民事部の裁判官が発信しているのが、緑の本であり、交通事故を専門的に扱う裁判官が発信する、とても貴重な本となります。

この本の第2編は、算定基準の解説ですが、裁判官自ら解説しているものであり、大変参考になります。赤い本や青い本より薄い本であり、端的な解説が続くため、通読しても苦になりません。交通事故損害賠償について裁判所の考え方が知りたければ、この本がシンプルで、とてもお勧めです。

慰謝料についても赤い本や青い本と違った特徴があります。
前回、赤い本と青い本の慰謝料について比較しましたが、今回は、赤い本と緑の本を比較したいと思います。

例えば、赤い本では半年通院の場合、むち打ち等は89万円、骨折等は116万円というのが基本的な基準です。これに対し、緑の本では、半年通院の場合、むち打ち等は80万円、骨折等は120万円というのが基本的な基準となります。
これをみると、大阪の方がむち打ち等に厳しく、東京の方が骨折等に厳しいように思えますね。他方、14級の後遺障害慰謝料は赤い本も緑の本も110万円でありながら、12級の慰謝料は赤290万円、緑280万円だったりします。慰謝料については所々違ってきます。大阪で訴訟基準とか裁判基準というときは、基本的にこの緑の本の基準を指します。
もっとも、これらはあくまで基本的な基準であり、当然、症状の重さや治療内容等の個別事情により、これらの基準から増減されることになります。結局、地域によって全く違うという話ではありません。昔は、東京と大阪でかなり考え方の異なる賠償項目がありましたが、年々、全国各地での違いは、なくなってきています。

ただ、大阪で交通事故の裁判をする際は必読ですし、相手方の保険会社のサービスセンターが大阪にある場合等は、緑の本を意識した示談交渉が必要になります。名古屋を中心とした東海地方で交通事故を扱っていても、同乗者の方が大阪在住であったりすると、大阪のサービスセンターと示談交渉したり、大阪で裁判したりすることもあります。名古屋で交通事故を扱う弁護士としても、必読の本です。

赤い本や青い本は、一般の方が購入するのは少し面倒ですが、緑の本については、楽天でも購入できるようです。

 

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